〜進路を決めた本〜
電気関係の仕事がしたいと思うようになったのは、
兄の繁が手に入れた 初歩のラジオ と言う本である。
その中にはトランジスタの作り方、電気回路の説明
などがあり、三郎には興味をそそる内容だった。まだ
中学二年か三年の頃である。大学に行くなど全く考え
られない経済状況で、高校出たら就職するつもりで
工業高校の電気科に入った。
就職は出来たものの仕事の内容が難しく、もっと勉強
しないとまともな仕事が出来ないと感じ、先に自動車
の免許を取ってから、会社に併設の夜間の富士通工業専門学校
に入学し3年間夜学に通う。これで会社では短大卒の扱い
となる。
話は高校時代に戻る。オーディオ製品は家には無かったが、
義理の兄があるスナックから古いステレオを貰って、
我が家に持ってきてくれた。レコードプレーヤーはSP用で
壊れており、チューナーとアンプ、スピーカーは使えた。
面白いのはスプリング式のエコーチェンバーが付いていた
ことである。尤もこれも使いものにはならなかった。
しかしアンプ系が使えたので、あとはテープレコーダーが
あればラジオから録音すればいい。自分のギター演奏や歌
も録音できる。
テープレコーダーはどうやって入手したか憶えていない。
このシステムで井上陽水の「傘がない」を録音してよく聴い
たことを憶えている。
余談だが、実父は「女の道」をアカペラで歌ってテープ
レコーダーに吹き込んでいた。ちょっとばかし変拍子なの
が笑える。
もっと経済的に恵まれていたら、別の道もあったかも
しれないいが、これが三郎の選んだ人生である。